入門森田療法ー2

 

第2章 治療法

1.作業療法(生活療法)

 森田療法の治療法は、入院作業療法として治癒することが見いだされて、これが治療法の主流として認められてきました。現在は入院作業療法は一部の病院に限られるので一般的には難しく、外来の医師の指導に基づく生活療法が主流になってまいりました。これらの治療法の目的は、症状にフォーカスを当てないで、作業或いは日常生活が上手くできているかに目を向け、このことに依って、いつの間にか症状を受け入れる「あるがまま」の状態が近づいて治癒すると考えられているからです。

 

 治療法の主眼は「はからう」ことから始まって症状を徐々に強くして、その事ばかりを気にするような状態「とらわれ」に至るため、この「とらわれ」を解くための方法が主な目的です。ただし、人間の「とらわれ」は本人が固く思い込んでいる部分もあり、これを解きほぐすのは結構難しいのです。その上、症状は病気であり、これを治す。との思いは常識的であり、これをそのまま受け入れて治そうとするのは、特に症状のきつい人にはとても困難な問題となります。このように常識的に病気を直接治そうと考えている人の思いを、徐々に症状にはフォーカスを当てないで症状よりも日常生活を正すことに依って、症状が良くなってゆくのだ。と方向を変えてゆくようにプログラムが作られています。このような治療法を作り出そうとして考え出されたこの方法を横浜第2集談会では採用しています。(集談会の先輩が作成していますので、まだ不備な点があるかもしれませんが、この方法を試していただきたいと考えています。)

 

 私も個人的に「症状を受け入れる」との思いをどうしても受け付けないで長い間苦しみました。また集談会でこのように「いつまでも症状を直接治そうとしている人」を何人も見てきました。私も含めて「症状を直接治そうとしている間は治りませんでした。治らないで集談会を去っていった方も結構いました」では、そうしたら受け入れる気になって貰えるか、その方法をずっと探していました。今回、ここに新しく作り出した「ステップ学習と実践方法」に依り、この順序を踏めば、かなりその状態に近づけるのかとの思いを強くしています。

 

 「自分の本来の方法は何か」などとの思いを「コメント」にして書き出す方法を併用するのです。コメントは段階に応じて変えてゆきます。本来の生活療法を実践しながらこの「コメント」方法を併用することで、徐々に森田療法の意味を見出して、この治療法を受け入れることができると考えます。このコメントは治療が進むにつれて、内容も変えるようにしています。このコメント例を添付いたします。(現在工事中)この方法に依れば自然に、森田療法に取り組むようにプログラムされている。と言っても良いと思います。

 

 自分でこのようなコメントを書きながら実践を進めることで、森田療法を実践する意義を見出して、やがて自分の「とらわれ」の状態や当初の「はからい」に気づくようになると考えています。この方法をこれから集談会で実際に使用してみて、効果のほどを実践して行きたいと思います。

 

 森田療法の治療法の核になるのは、症状にフォーカスしないで、日常の生活態度をただす方法にフォーカスを当てて徐々に症状の威力を減じてゆくことになるのです。(最初はあまり信用できない人が多いですが本当で、実に効果的です)この症状についてはフォーカスしない、不問に付す技法を用いるとしています。(中村敬先生の言葉)

 

2.感情を受け入れる

もうひとつ森田療法で大切な治療法があります。症状で辛い思いをしながら、生活療法をしていると時にはつらい、落ち込みのような感情や、パニックのように強い辛い感情がでてきたり、湧き上がってくる場合があります。このような時にはこの辛い感情に恐れを抱いたり、大変だとの思いにかられることがありますが、このような時にはこの辛い感情を嫌がらないで、じっと受け入れる方法を森田療法は勧めています。これは「恐怖突入」に近いようなまさに死と向き合うような大変な感情だと思います。これをじっと受け止めていると数分または数十分のうちにこの嫌な感情も流れて行き、落ち着きをとりもどすはずです。(感情の法則)

 

 このような洗礼を受けて、初めて森田療法の効果を実感した人は結構多いものです。また、生活療法の中でもいつも何か行動をしていることも中中に難しいことです。一休みしたいときは頻繁にあるでしょうし、疲れた時は休みたいものです。このような時はこの感情を受け入れる方法も知っていると動じないで、受け入れる方法が役に立つと思います。

 

 

 

第3章 適用症状

 

「はからい」のため最終的には「とらわれ」を生じたその結果、症状まで発展するとされる以下の症状に最適な精神療法と言われています。病名については、WHOの基準である「ICD-11(2023.3月現在最新)」と米国の基準である「DSM-5(2023.3現在最新)などに依ってずいぶん変わってきています。最新の病名(「良く分る森田療法、中村敬著」から引用しました)と発見会の表現と対比して記述します。

 

不安症郡 発見会では「不安神経症」に該当します。

① 全般性不安症:多数の出来事や活動に対して過剰な不安を覚えたり心配したりする。緊張も伴うので睡眠障害、動悸、頭痛、疲れやすさなど身体症状が生ずることも多いものです。

 

② パニック症:ストレスや死亡事故の目撃などを主因として、突然、強い動悸、呼吸困難、胸痛、めまい等の自律神経の強い緊張が起こり、強烈な不安と恐れを覚える。また起こるのではないかと予期不安で行動が妨げられる。このパニック症は、突然起こった病気だから治さなくてはならないとの「はからい」または「とらわれ」が強くあらわれる傾向が見られる。

 

③ 広場恐怖:広場だけに限らず、狭い人込みや映画館、理髪店、歯科医、トンネル、乗り物などの場所から逃げられないとの思いから強い不安を感じる。パニック症の後遺症が多いが、他の原因から独自に症状を持つケースもある。

 

④ 限局性恐怖症:高所、閉所、動物(クモ、ヘビなど)、地震、雷、注射、血液など特定の対象や状況に対して恐怖を生じ、回避行動を取る。

 

強迫症群 発見会では「強迫神経症(対人恐怖を含む)」に相当します。

 ① 社交不安症:DSM-5では上記の「不安症」に分類されているが、この中身がほとんど「対人恐怖」に属するため、発見会では強迫の分類とします。発見会のテキスト「森田理論学習の要点」でも「強迫症」に分類している。

人と接することで不安や赤面、あがり症、その他の様々な症状を生ずる。他人が関係する場面で症状が発生するケースが多いので「社交不安症」と命名されていますが、実態は対人恐怖と言われる症状とほぼ同じです。

 

② 強迫症:

 確認行為:例えばガスの元栓。ドアのかぎな。封筒の中身どを繰り返して、日常生活に支障を来たすほど何度も繰り返す行為。

 不潔恐怖:手の汚れから汚染や病気への不安から手洗いを止められないほど。こちらも日常生活に支障を来たすこともある。

 縁起恐怖:同じ道順に拘る。何回目かに拘るなど、いつもと違うことで縁起を気にする。

 認知型:頭の中で色々なことを妄想することが止められない。雑念行為などもこれに入る。考え続けて生活に支障がでるほど

 

③ ため込み症:発見会ではあまり一般的ではありませんが、過剰な買い物、無料な物の収集などモノの価値と関係なくため込んでします。捨てることができない症状です。

 

④ 醜形恐怖:自分の体の一部、または顔が見にくいと思い込み、そのため悩んだり人前に出られないと思い込む症状です。

 

⑤ 抜毛症、皮膚むしり症:眉毛、まつ毛、髪の毛などを繰り返し引き抜くこと(抜毛症)。或いは顔や腕などをかきむしること(皮膚むしり症)がやめられなくなる。不安や緊張が契機となる場合が多い。

 

 

身体症状症群 発見会では「普通神経症」

① 身体症状症:頭痛、腹痛、腰痛など医師からどこも悪くないと言われていても、痛みを訴え続ける。不安や抑うつを感ずる人も。精神的な原因と言われることが不満な人が多い。

 

② 病気不安症:重い病気に掛かっていると考え、心配で仕方がない状態。勿論検査を受けたり、医療機関を変えたりするが病気はみつからない。心の問題と言われても不満を抱いているケースが多い。

 

③ 医学的疾患を異常に捉える症状:胃腸や心臓の病気、糖尿病や高血圧などの様々な疾患を、重くとらえ心因性の問題でリスクが高まり、悪化したり回復が遅れたりする。

 

これらの様々な症状はほとんどがまず、こんな症状が有ってはならない、これは病気だから治さなくてはと、とらえる「はからい」を生じ、そこから毎日症状を観察するようになる「とらわれ」に至る一群の症状です。このような症状に森田療法は有効だと言われるものです。